あなたはラポールという言葉を聞いたことがありますか?

 

 

 

 

1.ラポールとは信頼関係のこと

コーチングや営業において、「ラポール」を築くことはとても重要なことです。「ラポール」とはフランス語で「関係」という意味があるのですが、特に共感に基づいた信頼関係のことを指します。顧客とラポールを築くことができれば、顧客の警戒心や緊張が緩和され、コミュニケーションが円滑になると言われています。だから、相手の承認や信頼を得ることを必要とする対人活動、例えば営業や恋愛、交渉といった事柄においては非常に重要となっています。このラポールが構築できれば、営業、恋愛、交渉といった事柄を自分のペースで進めることが可能となります。

 

コーチングにおいても、このラポールが構築されていない状態では顧客は自分の本心を話してくれません。本心を話してくれないのであれば、望むべき未来を一緒に描くことができないのです。「本心で話さないと正しいコーチングができません」と言うことも可能ですが、それを口にしなくてもしっかりとした信頼関係を築けるようになって置かなければいけません。言葉を裏返せば、ラポールを自然に築くことができないという自身のなさの顕れにもなってしまいます。

2.ラポールの築き方① ~相手が積極的に話す人の場合~

ラポールの築き方は、まずはテクニックを抜きにすると、相手の話をしっかりと聴くという基本的なことです。これを「傾聴」と呼んでいます。「聴く」という漢字を分解してみると、耳と目と心が入っています。更には十という漢字も入っており、相手の言葉に対して耳だけでなく、耳と心と目を使って普段の十倍相手に寄り添って聴きなさいということです。

話の聴き方としては、「なるほど」や「うんうん」と頷いたり、相槌を打つことをオススメします。頷きや相槌を打つことによって、相手が自分の話をきちんと聴いてくれているという印象を与えます。そうすると、自然と信頼関係を築いていくことができるのです。大抵の人は、これと逆のことをやってしまいがちで、いかに自分の話を聴いて貰おうかということに躍起なって、自分の話をひたすらやっています。相手の話を聴くだけで、相手の悩みや問題がひとりでに解決してしまうこともあるのです。

例えば、複数の仕事が入ってくると、途端にパニックになってしまう方がいらっしゃいますが、それはどの順番でやればよいか頭が混乱している状態であるからです。それをしっかりと紙に書き出すことによって、頭を整理したら、意外とそんなに仕事量がなかったと気付くこともあります。「傾聴」においても、同様に自分の中でこんがらがっている頭の中の思いを吐き出させることや、心の中の感情を吐き出すことによって自然に解消していくこともあります。前者がコーチングで、後者がカウンセリングです。こうしたことを自分一人で行うことができれば良いのですが、そもそも自分の枠を超えるができずこんがらがっている状態ですので、第三者の視点から物事を冷静に見て貰うことが効果的となります。

 

「傾聴」に戻りますが、間違っても相手が言っていることに対して、質問したり意見を言ったりすることはNGです。ひたすら聴き続けます。大人になると相手の意見に対して、それが自分の考えと違っているとついつい批判してしまいがちですが、ラポールを築くためには相手の立場を十分に理解していることが相手に伝わらなければいけません。その為には、否定することや、批判することは厳禁です。相手には相手の正しさがありますので、自分の正しさと相手の正しさをお互いに主張し合うと、争いになります。それを国家間で行うのが戦争です。自分の主張を押し通すことによって、相手がひかざるを得ない状況に陥った場合、相手に不満が溜まってしまいます。その不満が限界点を超えてしまったときに、取り返しがつかないことが起こります。相手には相手の世界があり、それが認めてあげることが始まりです。ラポールを築くコツは「相手の世界に理解と敬意」、これに尽きます。

 

更に、話が落ち着いたところでは「もっと教えて欲しい」「それからどうなるんですか?」と更に相手が話したくなるような言葉を発すると会話が弾みます。つまり、自分が話すのではなく、相手に気持ちよく話して貰うことによって、相手が自分の話をきちんと聴いてくれている状態を作っていきます。人は自分が思っている以上に相手に話を聴いて貰いたいものなのです。

ちなみに、こうした頷きや相槌、促しといったことは、パッシブ・リスニング(受動的な聴き方)といわれています。相手の話の展開に合わせて、流れに身を任せる聴き方です。

3.ラポールの築き方② ~相手が消極的な人の場合~

相手があまりしゃべる方ではない消極的な人の場合は、まず自分自身のことを自分の言葉として話して相手に共感して頂く必要があります。誰かの話をコピーしただけではその言葉に魂がこもっていないため、共感を生みづらいと言われています。そうした場合はたとえ相手の言葉であったとしても自分なりに解釈して、自分の意見を交えて話を進めていきます。そうすることで、相手の言葉が自分のものとして使えるようになっていき、会話のバリエーションが増えていきます。

 

また、相手が発言しやすいように質問によって誘導していく必要があります。例えば、「あなたの夢は何ですか?」というような感じで唐突に話しても、相手が考え込んでしまって回答に詰まる場合もあります。そんなときは、自分の夢について語ってみるのも手ですし、あなたの子どものことに憧れていたことは何ですかというように、過去に遡って聴いてみることも手です。自分のことを話すことは相手の話を引き出すための呼び水になりますし、過去に遡ることで相手の可能性を広げることにも繋がります。

 

そして、徐々に相手が話し始めたら、相手が言ったことをそのまま繰り返したり、相手の言ったことを纏めて要約してみたり、相手の言葉の裏の感情を汲み取ってみることも効果的です。相手が言ったことをそのまま繰り返すというのは、例えば、相手が「上司との関係が良くなくて・・」と言ったら、「上司との関係が良くないんですね」と同じことを繰り返すことです。自分が発言した内容は無意識的に発言している可能性もありますので、同じことを繰り返すことによって何か新たな気付きが得られることもあります。これはオウムのように繰り返しますので、「オウム返し」と言ったりします。

 

こうした、聴き手から話し手に話を促す聴き方は、パッシブ・リスニング(受動的な聴き方)に対してアクティブ・リスニング(能動的な聴き方)と言われます。他人から発言して貰うことにより自分の気付きを促ていく手法です。

4.ラポールの築き方③ ~コミュニケーションスキルの活用~

ラポールの築き方として、コミュニケーションスキル(ペーシング、ミラーリング)を使用して意図的に築くことも可能です。

 

ペーシングとは話し手の相手のペース(Pace)に聴き手のペースを合わせるやり方です。ここでいうペースとは話す速度(テンポ)やテンション、大小、音程、リズム、呼吸等のことを指します。例えば、怒っている人は大抵早口で話をしますが、それに対してゆっくり話をすれば、更に怒りを増幅させる可能性があります。また、ゆっくり話をしている相手に対して、早口で話かけると、自分のペースが乱れてしまい、話がかみ合わなくなったりします。それを避けるために、話し手に合わせたペースで聴き手も話すことで、相手が話しやすい環境を整えることができます。

 

また、ミラーリングとは、相手の動作や仕草に対して、自分も同じ動作や仕草を行うことです。相手に対して、鏡(Mirror)のように同じ動作を行うため、ミラーリングと呼ばれています。例えば、相手が腕組みをしたら自分も腕組みをする、相手が脚組をしたら自分も脚組をするという感じです。但し、ミラーリングを連発すると、相手が不審に思うこともありますので、そうした場合は少し相手よりタイミングをずらしたり、相手の部位と違う部位を触る等します。例えば、相手が鼻を触ったら、自分は口を触るといった感じです。しかしながら、あまりミラーリングに気を取られすぎると、そちらにフォーカスが行ってしまい相手の話を聴かないと言ったことになりかねません。なので、あまりミラーリングに意識し過ぎるようでしたら、ミラーリングを止めて傾聴に専念された方が相手に好印象を与えます。最後に、自分があくびしたら、相手もつられてあくびをしたら、ラポールを築けたも証拠です。

5.ラポールが築けた後は・・・

ラポールが構築することができたら、今後はあなたから態度を変えて、相手の望む方向や相手の制限されている地図を拡大していきます。こうした、相手の注目の方向を変えて、フォーカスを当て直すことをリーディング(leading)と言います。leadは「導く」という意味があります。相手の地図に新しいアイデアを入れて、外面からではなく内面からも光を当てることができれば、より柔軟な物の見方ができます。そうすることによって、相手が「あ!」や「AHA!」と気付くことが出来れば、相手は自ずと自分から変化して行きたくなってきます。

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