感情のコントロールができない未成熟な大人が少なくありません。
目次
1.感情のコントロールができないのはなぜか?
今の日本社会では「いつまでも若々しくあること」「元気に活動すること」
といった外的な価値にばかり重きが置かれ、
「内面的な成長・成熟」を重視する価値観が育まれてこなかったためです。
ここでいう「内面的な成熟」とは、
心理療法家であるカール・ユングの
「人生の午後」がキーワードとなります。
人生の午前は40~45歳ぐらいまでは、
仕事で業績を上げること、結婚して子供を育てる、
といった外的な事柄にエネルギーを向けていればよかったのです。
私も卒業してから、20代、30代と
がむしゃらに仕事に打ち込んで必死に食らいついていく
という経験をしました。
しかしながら、人生の午後に入ると、
内面に意識が向い始め、
自分の人生に与えられた使命や役割を問い始めます。
ユングはこの人生の転換点について、
「この時においてこそ、人間は下降を通じて上昇するという逆説を体験できる」
と述べています。
この「下降を通じて上昇する」ことこそが
中高年における「内面的な成熟」に繋がります。
2.中高年の成熟に必要な3つの要素 その1
1つめは「これが自分の人生に与えられた使命と思えて、
自分だけでなく、社会の為になるものを見つけること」です。
中高年ともなると、今までひたすら会社のためを
思ってやってきたのにそれが結果的に出世に結びつかず、
窓際に追いやられてしまうというケースは少なくありません。
しかも、そういう方に限り、若手を捕まえては教える等して、
業務の邪魔をしている傾向にあります。
精神科医のビクトール・フランクルはこう述べています。
「人間というのは、自分の幸せを探求している間は幸せになれない。
幸せは追いかければ追いかけるほど、逃げていく。
逆に自分が取り組むべき何かに我を忘れて取り組んでいる時、
自分の人生に与えられた『使命』に我を忘れて取り組んでいる時に、
幸福は結果として、自ずと、自然発生的な現象としてやってくる」
つまり、幸せは結果であって、それを追い求めてはいけないということです。
「私はなぜ幸せではないんだろう」と思って、
幸せを追求すればするほど、幸せとはかけ離れた生活になってしまうかもしれません。
例えば、夫婦や彼氏彼女を想像してください。
自分はこれだけの愛を与えているのだから、
相手から愛を貰ってもいいのではないかと思いがちです。
しかし、それを相手に要求すればするほど、
相手から見ると煩わしいと感じているかもしれません。
そうなると、相手はあなたから離れようとする傾向にあります。
だからこそ、自分が欲しいことを相手に求めるのではなく、
相手が自発的に行ってくれるように
自分から発信して、相手の為になることを考えていく必要があります。
社会のために何かできることはないかを考えていくことが、
中高年の成熟に繋がっていくのです。
3.中高年の成熟に必要な3つの要素 その2
2つ目は、「1人になって自分を深く見つめる『深層の時間』を持つこと」です。
時間には「表層の時間」と「深層の時間」の2種類があります。
「表層の時間」とは「他者と共有して流れている時間」であり、
「深層の時間」とはこの共有された時間から離脱することです。
他者と群れあっている時間というのは楽しいですが、
それは他者に流されてしまっており、
自分で考える能力を奪われてしまっていることに気が付きません。
組織の中に所属するということも同じことです。
自分を成長させてくれるものというのは、
自分の内側に向き合って自分で考えていくしかないのです。
だからこそ、1人の時間を確保して、
1人で考えることをしていかなければいけないのです。
4.中高年の成熟に必要な3つの要素 その3
3つ目は「深く交流しあう体験を持つこと」です。
自分の生き方を他者に深く語ることで、
互いにより自分の内面の深いところまで見つめることが出来ます。
2つ目の「1人になって自分を深く見つめる『深層の時間』」を経ることで得られたものを
社会的にアウトプットしていく場でもあります。
但し、この場においては自分はこれだけすごいんだという自慢話をするのではなく、
また他者を批判をするのではありません。
他者に語ることにより他者の見方や考え方を聞いて
更に自分の内面をより磨くための場として活用します。
こうした場の雰囲気の中に身を置くことで、
「場の力」によって心が自然と育てられていくのです。
感情をコントロールして、自らよりよい人生にしていきませんか?
【参考】諸富祥彦著、「本当の大人」になるための心理学、集英社(2017)