あなたは交渉事において気をつけていることは何ですか?
目次
1.勝敗は2通りしかない
交渉事における自分の勝敗は、勝ち(WIN)と負け(LOSE)しかありません。つまり、自分が勝つか、自分が負けるかです。
しかしながら、1対1の交渉事では、自分の他に相手がいます。自分と相手の2人を考えた場合、引き分けという特殊な状況を除けば、WIN(勝ち), LOSE(負け)の組合わせは以下の4通りです。
② WIN-LOSE
③ LOSE-WIN
(左が自分、右が相手)
「この中でどれが良いですか?」と言われると、恐らく大半の人は①のWIN-WINを選びます。しかしながら、実際の交渉事では②WIN-LOSEになってしまうことが多いように思います。つまり、大抵は自分が勝って、相手が負けるというパターンです。
2.WIN-LOSEは長期的にみるとLOSE-LOSE
WIN-LOSEは長期的にみるとLOSE-LOSEの関係になる可能性があります。WINで勝った方は短期的に見れば得をしているように見えますが、長期的に見ればLOSEになってしまっている可能性があると言うことです。
Aさん:「600万円にしてくれたら購入しますよ。」
Bさん:「600万円は厳しいので、800万円でなんとかなりませんか?」
Aさん:「だったら、ここで購入しません。他店で購入します。次からもう来ません。」
Bさん:「ちょっと待ってください。600万円で結構です。」
Aさん:「それならば、購入します。」
上記のような状況の場合、典型的なWIN-LOSEの関係になっており、AさんがWINでBさんがLOSEです。しかしながら、Aさんから厳しい仕打ちを受けたBさんはこのままでは済まず、Aさんに仕返しをしようと考えているかもしれません。今回の場合は設備の購入でしたので、保守(メンテナンス)の時に今回の値切られた分を上乗せしてやろうとか、次回の新しい設備を購入するときに今回の分を上乗せして見積もりだしてやろうとか、考えたりします。これではWINだと思っていたのに、結局のところLOSEになってしまいます。
私自身も新車を購入するとき、値引き交渉のやり方をしっかり調査をして行いました。その結果、私の希望通りの値引いた価格で購入することはできましたが、購入した直後に政府の政策のエコカー補助金を拡大するという発表がなされ、それも適用できるかと問い合わせましたが、完全に相手にして貰えませんでした。値引いて貰った分と補助金分を合わせるとあまり得をしたという気分になれませんでした。この場合、直接相手から仕返しを受けたといういうわけではありませんが、間接的に受けてしまった感じとなりました。
WIN-LOSEは強引な押しつけに他なりません。LOSEを押し付けられた人は、このままでは悔しかったり、怒ったりしているので、どこかで発散させるために、誰か勝てる人はいないか探します。それは、勝った当人かもしれないし、他の誰かかもしれません。結局のところ、人生はトータルで見れば、プラスマナイスゼロになるように出来ているのです。だから、自分が勝つだけではなく、相手に勝たせることで結果的に自分も勝つという相互満足交渉を行わなければいけないのです。
アインシュタイン博士の弟子が博士に「人間は何のために生きているのでしょうか?」と尋ねたと言います。そうすると、博士の答えは「決まってんだろ。他人のために生きているんだ。」と答えました。あなたの仕事においても、直接的、間接的を問わず他人のために行っています。警察官であれば地域の治安を守るため、消防士であれば火災から人命を守るため、医者であれば病気から人命を守るためです。人は他人なしでは生きていけません。「Give&Take」という言葉がありますが、その字の通りGive(与えて)してからTake(もらう)なのです。今では「Give&Give」と言われるくらいで、与えすぎぐらいが丁度良い場合もあります。しかし、これと逆をしてTake(もらう)ことを先に考えてしまう方がいます。それであれば、「自分だけよければそれで良い」という考え方に陥ってしまいます。
3.WIN-WINネゴシエーション
では、先ほどの事例ではWIN-WINにするためにはどうすればよかったのでしょうか。ポイントは自分が勝つことだけを考えるのではなく、相手が勝つことを考えることです。
Aさんが設備を購入する場合であれば、例えば「設備を2台購入してなおかつ即日現金で振り込みをするから割引できないか」という風に、相手にも得になるように持って行きます。そうすると、相手も喜んで相手はその交渉に応じてくるので、結果的には自分の得にもなります。
WIN-WIN以外の交渉では、結果的にはLOSE-LOSEの関係になってしまいますので、交渉事においては相手のWINは何かをまず考えていきます。
4.プロは「WIN-WINなんて言わない」
プロフェッショナルになるとWIN-WINなんて言葉は交渉では使いません。なぜでしょうか?
例えば、集合写真を撮る場合、プロのカメラマンであれば「笑ってください」とは言わずに、自然とみんなが緊張を和らげるよう仕掛けています。しかし、アマチュアのカメラマンであれば、「笑ってください」と声を出してみんなを笑わせようとするでしょう。私自身の経験からも、カメラマン自身が人々を笑わせるような面白いことを言ったり、パフォーマンスをしたり、その場にあった言葉を言って貰って笑いのポーズを取らせる方もいらっしゃいました。冬の鍋に入っている、足がたくさんあって身を取って食べる赤い生き物です。→答え:かに(「に」と言うと、笑っている顔になります)
これと同様で、プロであれば「WIN-WINの関係が重要です」なんて言わずに、自然とWIN-WINの状態になるように持って行きます。そうして、相手も気が付けばいつの間にか「得」をしているのです。
むしろ、「WIN-WINが重要だと」しきりに行ってくる人がいれば、それはその人の利益になるように働きかけていることを示唆しています。そういう状況下においては「WIN-LOSE」の状況になってしまうため、長期的には「LOSE-LOSE」なってしまうため、良い交渉を望むことは難しいです。
あなたは交渉事において、自分だけが勝とうとしていませんか?